抗生物質と抗ウィルス剤
微生物分野での功績としてしばしば取り上げられるのが抗生物質です。ペニシリン、ストレプトマイシンなどは有名です。このような抗生物質の発明で、人畜様々な病気の治療が可能になり、平均寿命も向上しました。
抗生物質は「ある種の微生物から分泌される、他の微生物の生育を抑制する作用のある物質」と定義されます。つまり、微生物の起こす病気において効果があるのです。
つまり、抗生物質をいくら飲んでもインフルエンザやHIVなどウィルス性の疾患には効果がありません。
このウィルスに対して効果を示す薬を抗ウィルス剤というのです。
しかしながら、世の中に多くのウィルス性疾患があるのに、抗ウィルス剤と銘を打っている薬はほとんど存在しません。抗生物質の種類に比べてもその種類は極端に少ないのです。なぜでしょうか
これは、ウィルスと微生物というものの違いによります。
微生物は、多くの場合ヒトと異なる方法で生命活動に必要なエネルギーを得ています。この際に、その微生物にしかない酵素を用いてエネルギー獲得を進めています。つまり、ヒトになくて微生物にある酵素を阻害して微生物の生育を止めたり抑えたりするのが抗生物質の作用です。
一方、ウィルスは生物ではないので、微生物のように自分の体でエネルギーを獲得し、自分自身で増殖する能力がありません。常に誰かの細胞に寄生し、その細胞の能力を利用して自分をコピーしています。
つまり、ヒトに感染するウィルスはヒトの細胞の能力を使って自分をコピーしているので、「ヒトにはなくてウィルスにだけある酵素」を見つけることが非常に困難なのです。そうでなければウィルスを叩くと、ヒトの細胞も大きなダメージを受けてしまいます。
これが、細菌病とウィルス病の大きな違いであり、治療法の大きな違いでもあります。
ウィルス病は上述のとおりなので、治療法はほとんどありません。
予防に徹し、インフルエンザなどはワクチン接種を勧められるのは以上によるものです。
細菌感染とウィルス感染の認識の違いは重篤な症状を招く恐れもあるので知っておくと良いと思います。